アヤサキ=フリート2−2−3
数日後。
面々は、シスプリの旗艦「シェフィールド」で、新たなる任務を帯びて茨の園を出航した。
「もう一度、今回の作戦を説明します」
ブリィーフィングルームに集められたみんなの前で、若菜が凛とした声で告げる。
「目的は、PS軍の新設部隊『ひびきの』に所属するT−LINK試作機R−3、及び専属パイロットの捕獲です」
「はいはーい!!しっつもーん!」
雛子が、元気よく手をあげる。
「てぃーりんく、ってなんですか?」
「えー?ヒナ、昨日説明されたじゃん。わかんなかったの?」
「なんだかむつかしくて……そういうマモルちゃんは、わかるの?」
衛、突然口笛を吹き始める。
「T−LINKというのは、一種の念動力のことです」
若菜、苦笑しながら再び説明をはじめる。
「ニュータイブと似たようなことができるようですが……NTが本質的に『コミュニケーション』のための能力であるのに比べて、T−LINKは純粋に戦闘のための能力のようです」
「そのPS軍の新兵器を奪ってしまおう、というわけですね」
佐祐理の言葉に、若菜は真剣な表情で頷いた。
「我々がキャッチした情報によると、現在『ひびきの』は、PS軍からの脱走を試みた『ときめき』と交戦状態にあるとのことです」
その事実に、ブリーフィングルームが騒がしくなる。
「ときめきが裏切ったっていうのは、本当だったのか」
「藤崎詩織さんが脱走したんだし、その後を追ったってことかな」
みんな、口々に囁きあう。
声を潜めているのは、その場に鏡魅羅……他ならぬ元「ときめき」のメンバーがいたからだ。
魅羅は薄い笑みを浮かべたまま、無言で席についている。
「PS軍の内輪もめに乗ずる形で、我々はR−3とそのパイロット……八重花桜梨を奪取します」
若菜の声に、再び静まりかえる室内。
「あの……」
「なんですか?楓ちゃん」
「どうして、そんな情報を取得できたのでしょう?。しかもこんなに早く」
「そんなことを詮索する必要はないわ」
楓の質問を、鏡が遮った。
「私たちは、与えられた任務を無事遂行することだけを考えるべきじゃなくて?。柏木楓さん」
「……はい。失礼しました」
楓、ぺこりと頭を下げ、再び席につく。
「それで、具体的な作戦案は?」
「私が直接、R−3に接触して説得を試みます」
「せっとく!?。そんなの、通じるのか?」
梓の声に、若菜も半信半疑の表情を浮かべる。
「説得といっても、私が行うのではなく……。このディスクに収められた情報を、パイロットに流すだけなのです」
「そのディスクの中身は?」
若菜、首を振る。
「私にも知らされていません。R−3パイロットにしかわからない暗号コードのようなので」
「?わかんないなあ……どういうこと?」
「総帥は、『木星船団の中にいる同志からのものだ』としかおっしゃいませんでした」
「木星船団といえば……『雫』か」
雫。
ヘリウム3採取用超巨大艦「ジュピトリス」を旗艦とする木星船団の名称である。LEAFの一勢力ではあるが、その立場(ヘリウム3は、地球では採取不能な貴重資源である)からほぼ独立した権限をもつ。
「雫のリーダーは、ニュータイプ研究所所長の経歴を持つ月島拓也氏です。私が思うに、それに関連してのことではないか、と」
若菜の説明に、面々は一応頷いてみせる。
「ひびきのとときめきは、前回戦ったセンチ=ベルとは比べ物にならないくらい強力な敵です。ゆめゆめ、油断などなさらないよう」
その時、ブリッジから連絡が入る。
「少佐。あと15分ほどで、戦闘空域に達します」
「それでは、解散!各自、MSデッキで待機!!!」