デザイア2−2−1(赤い扉編)
「はぁ〜〜〜、この扉、なんでしょう?」
みこは、デザイア施設を見学している最中、赤い扉を見つけた。
やけに寂れたところだった。まだ真新しいデザイアの内装だが、ここだけはやけに穢れた感じがする。
「なんだか、不気味ですね〜〜〜」
のんびりとした口調で、みこ。
突然、赤い扉が開いた。
そこは、白い糸のようなものが張り巡らされた部屋だった。
まるで靄がかかったような幻想的な空気の中に、ひとりの女が裸で立っている。
「よく来たわね」
女は、微笑った。
「いらっしゃい、私の巣へ」
「巣……ですかぁ?」
「ええ」
涼やかに頷く女。黒く長い髪が、静かに揺れる。
「あのぉ、どうして裸なんですか?」
顔を赤くして、みこ。
無言のまま、ゆっくりと女が歩いてくる。
みこは、動けない。
「あなた、まだ生娘ね」
「きむすめ……」
「おいしそう」
女の口が、かっ、と開かれた。
赤い、赤い口。
みこは、その赤に魅いられたように立ち尽くす。
その時だった。
「待ちなさいっ!!」
みこの後ろから、声がかかった。
そこには、女がひとり立っていた。
暗闇の中に爛々と光る猫のような瞳を、裸の女に向けている。
「また、あなたなの」
不機嫌そうに、女は呟く。
「あなたに狩りを邪魔されるのは二度目ね。一度目は許したけど……二度目はないわ」
女の白く柔い手が、斑模様の硬質な甲羅に変貌していく。
「ここで、戦うつもり?」
「おいしく喰らってあげるわ、鬼の娘よ」
「ここに来る前に、警備兵に知らせておいたわ。すぐに、ここに来るはずよ」
女の表情が変わる。
「私では、蜘蛛の女王であるあなたには勝てないかも知れない。でも、兵が殺到するまで戦いを長引かせることくらいはできるわ」
長い間、二人の女は睨み合う。
やがて。
「……いいわ。今夜のおもちゃが減るのは口惜しいけど」
女は、みこの体をどん、と突き飛ばした。よろけて床にもたれかかるみこ。
「さあ、忘れなさいな」
わんっっっ……
鈍い共鳴音が、みこの頭に響く。耳が割れるように痛い。
そこで、みこは気を失った。
「気がついた?」
医務室のベッドで、みこは目を覚ました。
優しそうな瞳をした女性が、みこの顔を心配そうに覗き込んでいる。
「はぁ……あの、みこは」
「3階B15棟の通路で、倒れていたのよ。それを私が見つけて、ここに運んだの」
「そう……なんですかぁ」
まだ、頭に鈍い痛みがある。
「あのぉ、みこはどうしてそんなところにいたんでしょう?」
「さぁ?」
女、苦笑して立ち上がる。
「もうしばらく、ここで休んでいくといいわ。……それじゃあ、私はこれで」
「あの、ありがとうございましたぁ」
みこは上半身だけを起こし、ぺこりと頭をさげる。
「あの、御名前は?」
「名乗るほどの名じゃないから」
クスクスと笑うと、引き止めようとするみこを振り払って、女は出ていった。