デザイア2−2−1(ハッキング編)
ライズは、デザイアの情報バンクへのハッキングを試みていた。
それは、いかなライズといえども、困難を極める作業だった。デザイアのプロテクトは、彼女が今まで相手にしたどの機関のものよりも、遥かに強固なものだったのだ。
「どうやら、LV.3のアクセスで我慢するしかなさそうね……」
ひとりごちると、ライズは検索を開始する。
対象は、マルチナ総司令、ゲーツ副司令、そして「みずか」だった。
●マルチナ・T・ステラドヴィッチ
ロシア科学技術アカデミー会員。物理学、生物学の博士号をもつ。グランチェスタ財団の客員教授として従事、現在「デザイア」総司令として勤務。夫は故グスタフ・G・ステラドヴィッチ
「パーソナルデータはほとんど不明か……。LV.3ならこんなものね」
●ドクター・ゲーツ
コロニー「シーズウェア」出身の医学博士。生物学などの博士号も合わせ持つ。その才覚をマルチナ総司令に見込まれ、デザイアの副司令に就任する。
「マルチナ総司令に……?。このデータでは、あの二人の関係まではわからないわね」
●みずか
該当データなし
「やはり……あるわけないわね」
これは、予想されたことだった。まさか、「みずか」という名前だけでなんとかなるとは、ライズも思っていなかった。
だが、長森瑞佳で検索するなら、どうだろう。
LEAFによって壊滅させられた「ONE」の長森瑞佳。彼女の行方は、澪も気にしていた。
「……私も、ずいぶんとお人好しになったものだわ……」
冷笑すると、ライズはコンソールを叩いた。
●長森瑞佳
該当データなし
「!?」
該当なし、とはどういうことだろう。
「抹消されているということ?誰が?なんのために?」
瑞佳のパーソナルデータを残しておくと、何か不利益があるのだろうか。
「そういえば……澪も、瑞佳のデータが消えていたようなことを言っていたわね」
何か、裏がありそうだった。引き続き、注意しておく必要があるだろう。
とりあえず、ライズの「任務」としての検索は、これで終わりだった。
だが、彼女にはもうひとり、調べておくべき人間がいる。
それは、任務ではない。
●リョウ・ミヅキ
東洋出身の傭兵。ドルファンにて多大なる戦功を挙げ、デュラン国王より外国人では初となる「聖騎士」の称号を受けABビルバインを授与されるも、同国にて試行された外国人排斥法により国外退去。その後行方をくらます。
未確認ではあるが、最近リガ・ミリティアと接触したという情報がある。
「リガ・ミリティアか……」
最近、地球圏を騒がせているゲリラ組織の名だ。まだ地球で目立った活動はないが……だとすれば、リョウは宇宙にいるのだろうか?。
「七瀬留美にビルバインを託したあと……あなたは、どこにいったの?」
ライズは、昨日の自分の行動を思い出していた。SS軍のセンチ=ベルのメンバーに、リョウのことを聞いてまわったのだ。結局、さしたる情報は得られなかったが……。
「無様だわ」
吐き捨てるように呟くライズ。
以前の自分からは、考えられない行動だった。
そんな自分が、いったいどこに行くのか。そして、何を得るのか。何を失うのか。
今のライズには、わからなかった。