第二話エピローグ


 第三新東京市に、夕闇が落ちかかっていた。先刻の激しい戦闘が嘘のような静寂が訪れている。
「それにしても、ひとこと言って欲しかったわね」
 晶は、ライズと澪に向かって言った。
「言ってくれていれば、あらかじめ対応もできたのに」
「悪かったわ」
 と、言うわりにはいつもと変わらぬ表情で、ライズ。

『ごめんなさい』

 澪の方は、ぺこぺこと何度も何度も頭をさげている。こちらはこちらで、気にしすぎというものだろう。
「多人数で動くと悟られやすいし、あの作戦は機動力が命だったから。澪と二人で動くのが最適だと判断したの」
「確かにスーパーロボットは機動作戦には不向きだけどね……」
 まだ晶は文句を言い足りなかったが、
「やっほー!!!瑞佳ぁぁ!!」
「七瀬さん、繭ちゃん!!」
「みゅーみゅー!!」
 隣で感動の再会を果たしているONEのメンバーに免じて、これ以上の追求はしなかった。
「ふふ、よかったね、繭ちゃん」
 優しい言葉をかけるほのかに、留美が申し訳なさそうに頭をさげた。
「あの……沢渡さん。さっきはごめんね、ひどいこと言っちゃって」
「そんなこと……」
「沢渡さんと水谷さんがデータを送ってくれなかったら、私、ずっと地下で迷子になってたよ」
 留美のビルバインは、奇襲をかけるためにエヴァ輸送用の地下通路を通って戦場に行こうとしたのだが、そのあまりの複雑さに立ち往生してしまったのだ。
 そこで、由梨香とほのかがヴァネッサに奇襲をかけるのに最適な通路を割り出し、留美に転送したのである。
「ところで、加納涼子さんの姿がみえないけど?」
 あたりを見回して、晶。レストグランシュの姿はあるが、パイロットがいない。
「事情聴取ということで、司令部に呼ばれていきましたよ。神山さんが付き添っていきました」
 確かに、彼女は重要な証人だ。もし本当にアルギルたちが異星人ならば、なんのために地球に来たのだろう。
 そのアルギルは、去り際にこんな言葉を残した。

「今日のところは、紫のエヴァの根性に免じて引き下がってやる。どうせ近いうちに、また会うことになるだろうがよ」

 つまり、彼らはまたやってくるということだ。
「うー、今度は絶対に負けないからねっ!!もっともっと特訓しなきゃ!」
 るりか、がしがしと拳を合わせながら叫ぶ。どうやら、先刻のショックからはもう立ち直ったようだ。
「それにしても、大所帯になったものだな」
 面々を見渡しながら、メイが呆れたように呟いた。これだけの数のロボット兵器が集っている場所は、他にないのではないだろうか。
「……各国の…兵器開発に携わるものがみたら…垂涎ものだな……」
「うむ、同感なのだ……って、貴様、なぜここにいる!?」
 傍らに、いつのまにか千影が悠然とたたずんでいた。
「……ここに…いる方が…楽しめそうだから……。しばらく…滞在させてもらおう」
 ロングタイトスカートを着こなす大人びた風貌の少女は、無表情のままそう言った。
「それよりも、サードチルドレンの容態はどうなのだ?」
 メイの言葉に、一同は押し黙る。
「とりあえず、発作はおさまったみたいだけど……しばらくは絶対安静ですって」
「それで済んだのは幸運というべきなのだ。あんなムチャをして……」
 メイは嘆息した。それは、あの戦いを目の当たりにした者すべての嘆息だった。
 エヴァ。真乃那美。クロスゲートパラダイムシステム。そして、マルチナ総司令……。
 デザイアには、いったいいくつの秘密が隠されているのだろうか。

 GC0083年、四月。
 第三新東京市に吹く風は、春の嵐となって空を舞いはじめた。。


第二話「窓辺からやがて飛び立つ」


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