地球ひびきの2−3−4
ラボ内にある、レクリエーションルーム。
楓子、美帆、美幸、ハンナ、リンダ、そしてアイリスと紅蘭は、集まってお茶を飲んでいた。
「あれ?すみれはんとマリアはんはどないしたんや?」
楓子の煎れてくれた紅茶を飲みながら、紅蘭。
「さっき、華澄先生と出ていかれましたが」
「難しい話しするんやろうな。ええわ。ほっとこ」
「ねえねえ白雪のおねえちゃん、どうして『せんせい』ってよぶの?」
口の周りにクッキーの粉をつけたまま、アイリスが訊ねる。
「ウフフ、華澄先生は、私たちの通う私立びひきの高校の先生でもあるからですよ」
「ほえー、軍人さんなのに、先生かいな」
紅蘭が感心したように頷く。
「んじゃ、あんたらも高校生なん?」
「うん、一応ネ。今は戦時下だから、休学扱いになっているけど……」
「そっか。高校が士官学校を兼ねるところもあるんやな」
「そーだよー。美幸たちの旗艦『トロイホース』の乗組員も、全員ひびきのの生徒なんだよーん」
「ハンナはんやリンダはんは?」
「ボクたちは、ただの高校生だよ。なあ?」
「私は、『ただの』高校生なんかじゃありませんわよ!とぉっーてもエレガントな高校生と呼んでもらいたいわ」
誰もそんなことは聞いてなかったが、リンダはおかまいなしに高笑いしている。
「あら、楽しそうね」
そこへ、華澄がやってきた。
「あ、お話終わったのかなー」
「ええ。私たちは、正式に公演の警護にあたることになったわ」
「わあ!やったぁ!」
喝采をあげる楓子。
「こ、これでずっとマリア様と……」
「み、美帆ぴょん……」
のぼせた声をあげる美帆の背中を、美幸は「どうどう」と叩く。
「あら、おいしそうなお茶ね。私にも煎れてくれない?」
「ハーイ」
トリップしている美帆の代わりに、楓子がカップに紅茶を注いで華澄に手渡す。
「ありがと……きゃ!」
華澄の手から、カップがすべり落ちた。
茶褐色の液体が、彼女の服の上にぶちまけられる……はずが。
ピタッ
カップは空中で静止し、そのままゆっくりとテーブルの上に静かに着地した。
「わー!!!わー!!!何今の何今の!!!!?!??」
大騒ぎする美幸。
「い、今、カップが空中でとまったよー!!!????」
「ボ、ボクにもそう見えたけど」
「目の錯覚……じゃないですよネ?」
紅蘭、アイリスをテーブルの下でつついた。
(コラッ、こんなとこで力を使ったら、駄目やないの)
(エヘヘ、ごめんね、つい)
「紅蘭さんも、今の見ましたよね!?。確かに空中で……」
「そ、そうかな?。ウチには、落ちたカップが偶然着地したようにしかみえへんかったけど」
「ア、アイリスも、そうだと思うよ〜」
少し焦りながらも、二人は否定する。
「嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘だぁぁぁぁ!!!」
「私、みたモン!。ゼッタイに、カップが」
「まあまあ、みんな」
華澄が仲裁に入る。
「こういう時は、白雪さんに訊ねるのが一番よ。ねえ?」
美帆、にっこりと微笑んで、そして言った。
「それは、妖精さんの仕業ですね」
一瞬、全員が動きを止める。
やや間があったあと、部屋に爆笑が巻き起こる。
「あははは!!白雪はんって、おもろいなあ」
「美帆ぴょんにそう言われると、なーんにも言えなくなるなー」
少女たちの笑いは、しばらくやまなかった。
だが、この部屋に、笑っていない者がふたりだけいた。
ひとりは、少し淋しそうにして俯いている美帆。
そしていまひとりは。
無邪気に笑うアイリスを見つめる、麻生華澄の目だった。