地球ひびきの2−2−2
日はすっかり暮れ、夜が訪れたメネシスラボのテラス。
「あらためて、助かったよ。ありがとう」
ハンナは、葵に握手を求めた。
「い、いえ……」
照れたように応じる葵。
「それにしても、驚きましたわ。あのキング・オブ・ハートが、こんなところにいるなんて」
「キング・オブ・ハートって、なーにー?」
「コロニー格闘技の覇者に与えられる称号ですわ」
「????」
「要するに松原さんは、地球圏で一番強い女の子というわけです」
リンダの説明に、美幸は目を丸くする。
「うっわーーー!!!。松っちゃんって、そんなにスゴイひとだったんだー!!」
「い、いえ、私なんて、まだまだですから……」
真っ赤になって、葵は俯いてしまう。
「でも、今日はホントにすごい日!。花組のひとたちだけじゃなくて、キング・オブ・ハートにまで会えるなんて」
「うふふ。地球に降りて来てから、いいことばかりですね。これで、テロ予告さえなければ……」
「テロ予告、ですか?」
美帆の言葉を聞きとがめて、葵。
「ええ、実は……」
楓子は、これまでのことをかいつまんで葵に説明した。
「……なるほど。そんなことが起こってるんですか」
「ハイ。実際、私たちが護衛につくかどうかは、花組の方々のお返事を待っているところなんです」
「あの、ところで、みなさん」
葵は、懐から一枚の写真をとりだした。
「この写真の人を探してるんですが、見たことはありませんか?」
そこには、呑気そうな顔をした黒髪の少女が写っていた。
「あー、これって、昼間もチンピラさんにみせてたヤツだよねー」
「うぅ〜〜〜ん……悪いけど、私には心当たりないカナ」
「ボクもないなぁ。リンダは?」
「存じませんわ」
そこへ、華澄がやってきた。
「あら、みんな。松原さんを囲んで、どうしたの?」
葵、華澄にもその写真を見せる。
一瞬、華澄の表情が変わった。
しかし、すぐにもとの笑顔に戻ると
「知り合いに似てると思ったけど、やっぱり違ったみたい。ごめんね」
と、葵に写真を返した。
「そうですか……」
「その人が、どうかしたのかしら?」
「いえ……別に」
「AI解析は、どうなりましたか?」
楓子が訊ねる。
「まだ結果は出てないけど……やはり、リガ・ミリティア製であることが有力でしょうね」
ラボを襲ったガンダム01は、リガ・ミリティアが地球に送り込んだガンダムの一機である。ただ、リガ・ミリティアが機械獣を使ったという例は、まだ確認されていないのだが。
「では、今回のテロも、リガ・ミリティアが仕掛けてくるのでしょうか?」
「今の段階では、なんとも言えないわね」
「でも、少なくとも密告状の信憑性は、かなり高まりましたわね」
リンダの言う通りだった。メネシスラボが襲われた以上、やはり花組の公演にも何か陰謀が巡らされているのだろう。
「そこで、松原さんにお願いがあるの」
真剣な表情で、華澄。
「おそらく、私たちは花組公演の護衛につくことになると思うわ。そうなると、寿さんを欠いた今の私たちじゃ、戦力不足なのよ」
「……あ、そっかー。美幸のGM、壊れちゃったんだっけー……はぁ〜〜〜」
がっくりと肩を落す美幸の背中を、美帆が「元気だして」と優しく叩く。
「そこで、ぜひあなたにも協力してもらいたいの」
「……」
「もちろん、見返りは出すわよ。今回の件が片付いたら、さっきの写真の女性を探すのに、私たちも協力させてもらうわ」
どうかしら?と華澄は笑いかける。
「公演が終わるまででしたら、お手伝いさせていただきます」
「ええ、それでいいわよ。あなたにはあなたの任務があるでしょうから」
「わあ、葵さんが協力してくれるんなら、心強いなぁ〜〜〜!」
本当に嬉しそうな楓子の様子に、葵は照れくさそうに頬をかいた。