そうして、ひびきののメンバーは旗艦「トロイホース」ブリッジに集められた。
「ええええええええ〜〜〜っっ!!!!!????」
 相手の名前を聞き、面々は驚く。
 「ひびきの」の記念すべき初陣の相手は、SS軍でもなければDOSV軍でもなかったのだ。
「それが、本当なんだよ」
 地球に行った麻生華澄の代行として、リーダー兼艦長を務める坂城匠は、困惑の表情を浮かべながら言った。
「何しろ、俺たちの先輩にあたるわけだからな」
 穂刈純一郎も、その傍らで頷く。
 「ひびきの」の隣のコロニーである「きらめき」。そこに造反の容疑で軟禁されている「ときめき」のメンバーが、戦艦アーガマを奪って脱走したのだという。そしてその追撃任務が、光たちに課せられたのだった。
「ときめきが反乱を企ててるっていう噂は、本当だったのね」
「あの」
「ん?どうしたの、八重さん」
 何かを言いかけて躊躇した花桜梨に、匠が促す。彼女は少し迷ったあと、
「藤崎さんが脱走しただけで、残った虹野さんたちに罪はないという話じゃ……」
「八重さんは、ときめきのメンバーと面識があるの?」
「……ううん……。そうじゃないけど」
 静かに首を振る花桜梨。
「でも、逃げたってことはやっぱり後ろ暗いところがあったんじゃない?。自分達が正しいのなら、軍事法廷で潔白を証明すればいいのに」
 琴子の言うことは正論だった。
「とにかく、話をする機会を得るためにも、逃げられるわけにはいかない」
 純一郎、強い口調で皆に言う。
「そうなったら、ときめきは本当に救いがなくなる。反乱軍と規定されて、撃滅されるだけだ」
「うんうんっ。その通りだねっ。純くん、いいこというなあ〜っ!」
 明るい口調で、光は相づちをうつ。
「というわけだから、急いで出港するよ。総員、配置について。パイロットは、MSデッキで待機!」



 こうして、トロイホースは出港した。艦長は匠、操舵は純、索敵・通信は茜が務める。


 R−3のコクピットで。
「無実の、罪……か」
 花桜梨は、呟いていた。
 彼女はその鋭敏な感性で、この事件には何か裏があることを感じ取っていた。
 それが何なのかまではわからない。言葉にできないもどかしさが、花桜梨の胸中にあった。

(逃げたってことは、やっぱり後ろ暗いところがあったんじゃない?)

 先刻の琴子の言葉が思い出される。それは、花桜梨の心をちくりと刺していた。
「私は……違う」
 声に出して、花桜梨は自分に言い聞かせようとした。
 しかし、何故かその声は虚ろに響いてしまい、ますます彼女を闇に誘うのだった。


「こんなことになるなんて、思ってなかったなあ。ときめきと戦うなんて」
 光は、親友の琴子のみに通信を開いて、弱音を吐いた。
「なによ、光。さっきとずいぶん言うことが違うじゃない?」
「あれは……少しでも、場の雰囲気をよくしようと思って」
「ホントにお人好しねえ。まぁ、そんなことよりも」
 苦笑しながら、琴子は話題を変えた。
「どうして、土壇場であなたの頑駄無は変更になったのかしら?。亜烈久須は、あなたに馴染んでたのに」
「……琴子、その武者ガンダムみたいな呼び方やめてよぉ〜」
 ガンダムNT−1。通称「アレックス」。PCE戦争時、藤崎詩織専用機として開発されたが実戦投入前に終戦を迎えてしまったという高性能試作機。それが、光のMSになるはずだったのだ。
「それがさぁ、よくわかんないんだ。ユーキ准将に聞いても、『俺がメタルユーキだぜ!』って叫ぶだけだし」
 アクの強い上官を持つと苦労するわよね、と琴子は同情する。
「あ、でもさぁ、このヴィクトリーってガンダム、すごい性能だよ!。LEAFのゼータシリーズとかにも負けないんじゃないかなぁ」
 モニタで機体データをチェックしながら、光。その機動性能、ビーム兵器の出力ともに、水準を大きく上回っている。更に驚くべきことに、この機体は通常MSより小型化されているのだ。
「……あれ?」
 そこで光、機体データの中に見慣れない項目があるのを見つける。
「シークレットファイル……なんだろ?」
 そのデータを呼び出すと、モニタに短いメッセージが映し出された。


「時が未来に進むと、誰が決めたんだ?」


「……はぁっ?」
 思わず、素っ頓狂な声をあげる光。
「時が未来にって……当たり前じゃない。誰が決めたなんて言われてもさぁ」
 思わず首をかしげる光。それにしても、何故MSにこんな言葉がインプットされているのだろう。
「敵艦アーガマ、捕捉っ!!距離、8000っ!」
 通信士の声が、光の思考を遮った。
「よっしゃあ!待ってたぜっ!」
 ほむらの弾けるような声。先刻の実験の疲れは、すでに吹き飛んでいるようだ。
「んじゃあ、あたしは出るぜっ!」
「ちょっと、出撃順は私が先よ」
「カタイこといいっこなしだぜ!!。ゴッドリラー、はっしぃぃぃぃんっ!!」
 琴子が止めるのも聞かず、ほむらのゴッドリラーは出撃していった。頭のドリルが、ヤバイくらい輝いている。
「まったく……。円盤からくり人形、水無月。出るわ」
「八重。R−3。いきます」
「………」
「ねえ、光ちゃん、どうしたんだい?」
 いつまでも出撃しようとしない光を怪訝に思い、茜が訊ねる。
「う、ううん。何でもないよ!。あ、しゅ、出撃だよね?」
 メッセージを画面から消すと。光は、勢いよくレバーを引き倒した。
「陽ノ下光、ヴィクトリーガンダム、いっきまーす!!!」



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