序 章


栞 「祐一さん、私最後まで笑っていられましたか?」
(雪の上に寝そべっているというのに体が熱い、まるで溶けてしまうみたい、ああ、意識が遠のいていく・・・、さようなら祐一さん・・・)

栞 「・・・えっ、羽?・・・、あの人は・・・」

栞 「私、生きてるの?・・・、どうして・・・」


☆ ☆ ☆

チリン、チリン・・・

鈴の音が草原に響く
真 琴「あう〜・・・、けっこ・・・したい・・・ゆうい・・・と」

(体が焼けるように熱いよ・・・、苦しいのに助けてっていえない・・・)
(言葉をしゃべれない、・・・だんだん意識がなくなっていく・・・)
(消えちゃうの?いやだよ〜)

真 琴「えっ、羽?」

ぴろ「クゥーン……」

真 琴「ぴろ〜くすぐったいよ・・・」

真 琴「……」

真 琴「あたし、なんでここにいるの?」


☆ ☆ ☆

美 汐「どうして・・・消えてしまったの?わたしをおいて・・・」
美 汐「こんなに悲しい思いをするくらいなら・・・、誰もいらない・・・」
美 汐「不思議ね、悲しくてしょうがないのに涙もでないの・・・」
(わたしは、こうして感情を抑えて生きていくことにした・・・)

(あの子は、まさか・・・)
美 汐「・・・・・!?、あなたは、あの門で待っている子の知り合いなんですか?」

そんな美汐のそばにゆっくりと一枚の羽が舞い降りてこようとしていた


☆ ☆ ☆

 ONE仙台基地。
みさき「あぅー、熱いよー、怖いよー」
 焼け落ちていく、基地内部。
 仲間達の声は、すでに聞こえない。
 無事なのかどうか、それさえもわからない
みさき「ひどいよー、同じDOSVなのに〜、酷いよ〜」
 ONE基地は、突然のLEAFの襲撃により、壊滅状態にあった。
みさき「!!」
 炎が爆ぜる音とともに、崩れ落ちてきた天井が、みさきの身体の上に覆い被さる。
みさき「……う……」
みさき「こんな……ところで……わたし……」
みさき「まってるって……こう……へ……」

 その時。
 赤い炎に混じって、ひとひらの雪……いや、羽根が舞い下りてくる。

みさき「…………」
みさき「…………」

みさき「ここは?……私、どうやって助かったの?」


☆ ☆ ☆

名 雪「私もう、笑えないよ・・・」

(祐一は、ああいってくれるけど・・・、やっぱりお母さんがいないと私・・・)

(ダメだよ、やっぱり・・・お母さん・・・)

名 雪「え、羽?・・・」

 空を振り仰ぐ。

名 雪「あれは、あゆちゃん・・・」

名 雪「……」

名雪「どうして、そんな顔をするの・・・」


第二話
『Little Fragments』(1)



守口市 「KEY」本部

○基地制御室

オペレータA「第三次接続に移行します」
オペレータC「神経系に拒絶反応見られません。順調です」
秋 子「了承(1秒)」
オペレータB「各パイロット、睡眠状態に入りました。呼吸、脈拍、その他すべて正常値です。生命維持に問題ありません」
オペレータA「(秋子のほうに振り返って)水瀬長官、本当にこのシステムは大丈夫なのでしょうか?」
オペレータB「特務機関デザイアの技術提供による、Remembrance Feedback Device……あまりにも不明な技術が多すぎます・・・」
オペレータA「時間を溯るなんて、とても可能とは思えませんよ」
秋 子「(モニターを眺めながら)しかし、今あの子達を救うことが出来るのは、このRFDだけです、これ程の装置を意味もなく提供してくれる人ではありませんよ、マルチナ博士は」
オペレータC「例の、人類補完計画の・・・」
秋 子「(言葉を遮るように)そのことは、他言無用です」
オペレータA「しかし、納得がいきません。この装置は、千の可能性を秘めていると同時に、万の絶望も内包しています」
秋 子「今、何ができるかですよ、その中で最良の手段を考えましょう」
オペレータA「・・・・・・・・・」
オペレータB「システム、最終段階へ移行します。作戦開始まで20です」
秋 子「笑顔で見送ってあげましょう」

 RFDと呼ばれる謎のシステムにつながれている5台のマシンと1体の動物?があった。
 そしてそれぞれのコックピットには、至る所に配線が延びているノーマルスーツが配置されている。
 ノーマルスーツの主は、それぞれがまだ若い少女達であった


 何かが始まろうとしている。



○その前日。
「KEY」本部 ブリーフィングルーム

 6人の人影が机を囲んで向かい合っている。
 明かりは、手元のコンソール部に灯っているだけで、人物が誰であるかはわからない
 そう、ほとんど暗闇の中にいるように・・・
 先ほどから淡々と語っているのは、長官の水瀬秋子であった。

秋 子「以上のことから考えられる時間の設定は、7年前の12月ということになります」
秋 子「そこで何を見て何をすればいいのかは、皆さんに任せます」
秋 子「それぞれの理由は違いますが、皆さんは同じ目的を持った仲間なんです」
秋 子「(やさしく、威厳のある声で)RFDの詳しい説明を知りたい人は、後で私に尋ねて下さいね」

 左を頬にあてて話しを続ける秋子、他のものがしゃべることは一切無かった

秋 子「それでは、解散します。作戦開始までゆっくりして下さい」

 秋子の席のコンソールの明かりが消え、何も無かったように沈黙の時間が流れた
 ひとり、またひとりと
 その場を離れていく・・・しかし、ただ一人だけその場に残っていた・・・
 コンソールの明かりに照らされるその人物は、見事に眠っていた


○作戦開始の朝・ブリーフィングルーム

秋 子「おはようございます。みんな、気分はどうですか?」

 美坂栞、沢渡真琴、川名みさき、深山雪見、天野美汐が、こくりと頷く。
 しかし、案の定名雪の姿はない

秋 子「(ぜんぜん困った様子をみせずに)あの子にも困ったもんね・・・」
秋 子「ちょっと起こしにいってきますね」

 秋子、部屋を出て行く。
 しばらくして、秋子とともに、まだ眠そうな目の名雪があらわれた。
 その口のまわりには、得体の知れない色をしたジャムがついている。

名 雪「(きょろきょろしながら)びっくりしたよ〜」
真 琴「わ〜名雪面白い顔〜」

 けらけら笑う真琴の膝に、ぴろが飛び乗ってくる。

真琴「あ〜、ぴろも一緒についてきてくれるの〜?」
ぴ ろ「ファミリアなんだから、当然にゃ!」
栞 「なんか今、ぴろがしゃべったように見えたんですけど」
美汐「……(聞こえない振りをしている)」
秋子「ぴろは、ファミリアですからね〜。使い魔、といった方がわかりやすいかしら?」
雪見「魔装機神の操縦には、ファミリアが必要とは聞いてたけど……さすがに目の前で見ると驚きねえ」
みさき「っていうか、みえないよ〜〜〜。誰がしゃべってるって?」
秋子「(にっこり微笑んで)みさきさん、雪見さん、もうすっかり怪我はいいようですね?」
雪見「はい。ありがとうございました。LEAFに襲撃されたONE基地から、私たちを助けてくれて」
秋子「助けたのは、私じゃありませんよ」
みさき「……うん……」
雪見「?」
みさき「あの〜、ところで、茜ちゃんや澪ちゃん達の消息はわかりましたか?」

 秋子、無言で首を振る。

雪見「だいじょうぶよ、私たちだって無事だったんだから」
みさき「うん、そうだね」
真琴「ところでさぁ、ここには肉まんやマンガはないのかな?」
名雪「あるわけないよぉ、私のうちじゃないんだし」
栞 「アイスも、ないんですよね……」
みさき「うぅ、おなかすいたよー」
名雪「さっきのジャムならあるけど……」
真琴「あ、私それでいいや。食べさせてよ〜」
美汐「(無言で頷く)」
栞「わぁ、何ジャムですか?楽しみです」
名雪「私は、止めたよ」
みさき「?」
名雪「私は、止めたからね」


 少し離れて、その様子をみつめながら

秋子「ふふふ、楽しそうですねえ」
オペレータA「そりゃあ、若い女の子どうしですからね」
オペレータB「しかし、あの子たちの力には素晴らしいものがあります。くまさんチームにも匹敵するでしょう、間違いなく」
秋子「名機Zガンダムの流れを汲むリガズィ、火の魔装機神グランヴェール、ゾイド・ゴジュラス、あのナデシコのEOTがフィードバックされているブラックサレナ、そして……」
オペレータC「ALICE搭載型MS、スペリオルガンダムですか」
オペレータA「あの美坂栞という子、ニュータイプなんですか?ALICEに選ばれるなんて」
秋子「美坂さんにNTの素養があるかないかは別として、ALICEとはカンケイありませんよ」
オペレータB「しかし、ALICEもRFDと同じく、デザイアの提供です。やはり何か……」
秋子「それ以上詮索しないほうが、楽しく生きられますよ」
オペレータB「……」

 言葉に詰まるオペレータを尻目に、秋子は皆のところに歩いていく。

秋 子「(幼稚園児に言い聞かせるように)はいはい、皆さん静かにして下さいね!」
秋 子「システムは昨日説明したとおりですが、もう一度注意する点を伝えておきます」
秋 子「(きりりとした態度で)仮想空間といえどもそこで起きた出来事は、全て皆さんに影響がおきます」
秋子「もちろん、皆さんの乗る機体も、仮想空間上にそのまま再現されます。武器の火力、装甲などすべてです。普通の実戦となんら変わるところはありません」
秋 子「現時点で変換率が99.85%ですからほぼ、現実と同じであると考えてもらっていいです」
秋 子「そこで、見たこと感じたことはすべて皆さんの記憶となって反映されます」
秋 子「きっと答えが見つかることを信じていますよ」

 少女達は、その言葉にこくりとうなずいていた

秋子「それでは、作戦を開始します。全員、オペレーションルームに集合してください」


○「KEY」本部 オペレーションルーム

秋 子「時間がもったいないですね、早速7年前にタイムワープするとしましょう」
秋 子「みんながそれぞれ考えて行動をしてもらいたいのですが、団体行動の約束はちゃんと守ってくださいね」
秋 子「これより、皆さんのチームを「Kanon」と呼称します。時空間移動後は、こちらとの通信は出来ませんがある程度のバックアップは出来ると思います」
秋 子「(何かを吹っ切ったように)それでは、作戦を発動します」


 作戦の開始を知らせる警鐘音がオペレータルームに鳴り響く


オペレータA「システム上にパイロットの疑似人格が形成されます」
オペレータB「変換率99.85%、誤差0.0017%、数値目標を全てクリア、成功です」
オペレータA「双方向回線を開きます」

 オペレータ達から一瞬歓声があがる。

秋 子「(まわりのみんなの労をねぎらうように)みんな、後もう少し頑張って下さいね」

オペレータA「時間軸設定 −007 12 26 48 00、座標軸は固定します」
オペレータB「システムの稼働率100%、各数値に問題は認められません」
オペレータA「予測到達ポイントの再計算の誤差 0.0017 状況全てグリーンです」

 オペレータ達は、秋子の言葉を待っていた

秋 子「(ゆっくりと閉じていた目を開いて)時空間移動装置作動!」
オペレータ「了解」

 モニターに流れる様々な情報をオペレータ達が告げていく

オペレータA「時間軸の接続を確認!ワープホールが開きます!」

 その瞬間、オペレータルームに警報音が鳴り響いた!


オペレータB「(さかんにキーボードを叩きながら)何者かがメインコンピュータを介して外部からのハッキングを受けています、防御し切れません! 侵入者は、RFDに接続を試みています」
秋 子「作戦中止、ワープホールを緊急に閉鎖!」
オペレータA「ダメです完全に開いています、全機体はすでに時空空間に転送されています」
オペレータB「侵入者は、RFDのシステムに機体を変換をしています、こちらから制御できません」

 Kanonチームのマシンがいた場所に見たことのないマシンが形造られていく・・・

謎の声「システムの緊急停止ができないことは、すでに調査ずみさ」

秋子「!?。あなたは……」
オペレータA「侵入者、完全に変換されました!」
秋子「あれは……LEAFのメタルアーマー?」

 モニターに一機の機体が映し出されたと同時に、それは、ワープホールへと消えていった

謎の声「私には、あいつのためにどうしても奇跡が必要なのだ、そのためなら何でもしてやる!」
謎の声「全ては、私がプロデュースするのだ・・・」

オペレータA「ワープホールが閉じていきます。侵入者も時空空間に転送されました・・・」

秋 子「(モニターに映し出された映像を見て、何かを思いだしたかのように)まだこだわっているのね、あなたは」
秋 子「未来は、誰にだって変えられるのに・・・・・・・、英二君・・・・」

今を変えるために
過去への扉は今、開かれてしまった



戻る