LEAFシナリオ2−1
「やはり……。やらなければならないのでしょうか?」
「止むを得ません。上層部が決定したことです。我々はそれに従うほかありません」
「……しかし、今回は独自の行動ですし、一歩間違えば全てが敵に回ってしまうことも……」
「今までも、彼ら。我々を雇っていた人物(モノ)達は我々を味方だとは思っていませんでしたよ」
「しかし……」
男は女の言葉を遮るように深いため息を吐き出した。
「……。仕方ありません。我々は軍人なのですから。上からの命令には従うのみです」
第二話「大切な想いは誰のため
「私達、これからどうなるんだろうね……」
あかりは呟いたがそれに答える者はなかった。くまさんチームのパイロットは全員各自の部屋で謹慎を言い渡されていた。
あの判決から1週間。ザンジバルは主要クルーを乗せ発進した。しかしパイロットには目的先を話されていない。そして不自由な監禁生活。さらに……。
「浩之ちゃん……」
いつまでもくよくよしてられない。葵ちゃんは浩之ちゃんを助ける為にたった一人地球へ行ったのだから……。そう思っていても……。
「パイロットは至急ミーティングルームに集合せよ。繰り返す。パイロットは至急ミーティングルームに集合せよ」
「なんだろう……。けど、何かが変わるのかな?」
とりあえず至急と言っていた。詮索は止めてミーティングルームに行こう。そう考えるとあかりは部屋を出た。
それに先立つ4日前のこと。
「……。これが今回の作戦だ。この作戦はある意味囮的な意味もある。しかし忘れるな。これが今後の布石、そう。重大なきっかけとなるべきものだということを」
「…………」
男は表情も変えず、淡々とした口調で述べた。
長考した後、もう片方の人物は答えた。
「了解しました。しかし、現戦力だけでは少々不足だと思うんやけど……」
「その点は心配ない。ああ、言ってなかったな。今度新設された『こみっくパーティー』の一部を演習を兼ねてそちらに回す。演習、というのはあくまで方便だがな。これで問題は無いだろう」
渡された資料に軽く目を通し、彼女は表情を変えぬまま敬礼を行った。
「わかりました。それでは失礼します」
残ったのは男一人。彼女が出ていったあとのひとりの部屋で、男は、ぽつりとつぶ
やいた――
「デビルガンダム……か――黄金の切り札。いや、役なし(ブタ)、かもな。どうする? 永遠の世界に関わる者達よ……やつらはたやすい相手ではないぞ――」
召集から5分後。ミーティングルームにはすでに全員が集まっていた。しかし誰も挨拶を交わすことなくただ俯いて座っている。マルチと理緒は泣いていたんだろうか……。目が腫れぼったくなっている。
数分後、奥の扉が開き一人の女性が入ってきた。
「全員集まっとるみたいやな」
「ほ、保科さん?!」
今入ってきたのは間違い無く保科智子だった。しかし彼女は今地球にいるはずだが……。誰もがそう考えていると智子が着席し話し出した。
「今度、くまさんチームの司令官代理として配属された。一応あんたらの上官に当たる訳やけど、なんか問題あるか?」
…………。
誰しも色々な思惑が頭の中を駆け巡る。しかしその沈黙を了解と智子は受け取った。
「では、今後の予定を伝える。まず、現在の謹慎を解く。ただあんなことがあったばかりや。今までより少し不自由になるかもしれんけどそれは了解したってや。第2に、先の戦いで神岸あかり、マルチの修理用パーツが足らんから、新機体に交換。神岸さんのはちょっと遅れるけど、マルチのはもう持ってきた。後で確認しとき」
「はい。それで私とマルチちゃんは一体何に……」
「神岸さんは……。ちょっと未定らしいんや。いま上の方で新規機体作っとるらしいんやけどそれの一つが来るらしい。そんな訳で、とりあえず到着する間、戦闘中は艦長代理として艦に残っててくれんか。神岸さんはくまさんチームのリーダーとして全体の戦況を読み取ることを学んで欲しいんや」
「そうですか……。わかりました」
「マルチの機体はトールギスや。今までのデータを移し変えとるから調整はもうすんどる」
「はいぃ。わかりましたぁ」
自分の名前が呼ばれて驚いたのかマルチは立ち上がって返事をした。
「それで、次やけど。辞令がきとる。今後の目的や。『くまさんチーム及びザンジバルは現在頻繁になっている宇宙海賊、特に民間船より物資を強奪している連中の掃討に力を注がれたし』 以上や。それと、今度新説された部隊の演習も兼ねることになっとる。メンバーは3人で部隊名は『こみっくパーティー』 色々聞かれるかもしれんけど、あんたらの方が先輩何やし教えたってな。それでは解散」
「ちょっと待つネ、智子」
「なんや」
「新規メンバーのname私知らないヨ」
「まだ着いとらんのや。着いたらまた呼ぶからその時でええやろ。私もよう知らんのや。コンピューターにはいっとるはずやから」
「OKネ。後で調べてみるヨ」
「そろそろ出撃……だな」
不意に男が独り言を呟いた。彼は自分の尊敬する上官を疑うことはなかった。しかし、今回の作戦は今一つ要領を得ない。それでも上官の命令には従うのが軍人だと彼は信じていた。
「出撃準備整っているか?」
「各機関チェック――オールグリーン」
「パイロットは全員いる。機体もな」
男は一つ頷くと座席――艦長席から立ち上がり出撃を告げた……。
「うーー。早く着かないかなあ」
「もうすぐやろ。あ、そか。詠美ちゃんはお子様やから、もうお船は飽きてしまったんやな?」
「なによなによなによなによ。パンダのくせに。パンダのくせにい〜」
「はいはいはい。船の中で暴れたら危ないから座ってなきゃ駄目ですよ〜。おこちゃまの詠美ちゃん」
「ううう〜〜〜」
シャトルの中、何やかやといいながら由宇もいい加減飽きていたのは自覚出来た。ましてや我慢の足りない詠美にとっては苦痛に等しいだろう。
「ああ〜。見えてきましたですぅ」
それまでじっと外を眺めていた千紗が嬉しそうにそう言うと、詠美が同じく窓から外を見た。
「なんだかボロっちいわね。クイーンのあたしが乗ってあげるんだからもっとキレイなのにしとけばいいのに」
「これだから大庭カはいややわ。うちらが自分で選べるわけないやろ」
このままではまた大騒ぎになる。それはここ数日で充分にわかった事だった。よって千紗はそれを回避するべく色々考え出した。
「あ、あの。もうすぐ着艦するので席に座ってた方がいいと思うんですけどぉ」
「あ、そか。それもそうやな。いかんいかん。余りに暇だったからまた詠美ちゃんからかってもうた」
そう言って由宇は自分の座席に座りベルトを締めた。
「ふ、ふん。今回はあんたの顔をたててあげるから、感謝しなさいよね」
「司令官代理。通信が来てます。本部からです」
「繋いでや」
ブブッ……
画面の先には仕官らしき人物が出てきた。智子の知らない人物である。
「小官はリーフ・アクアリウム情報通信部の阿部大尉。本部の指令を伝えます。くまさんチーム及びコミックパーティー部隊の演習に追加随員が加わることとなりました。メンバーはくまさんチームにHMX−13セリオ、コミックパーティーに長谷部彩。以上2名」
「了解しました。到着予定は?」
「先発部隊はそろそろ着く頃だと思います。2次部隊は先発隊の出発直後に派遣が決定してすぐに出発したので、そう遅くはならないでしょう。それでは、訓練頑張ってください」
数刻後。
「シャトル、到着しました」
「わかった。パイロットをミーティングルームに集合。機体はハンガーにいれて整備しといてや」
「了解」
それだけ言って智子はミーティングルームに行くために艦橋を出た。
「全員集まっとるな」
「はい」
「それでは、今度新設された『こみっくパーティー』通称こみパのパイロットが到着した。すぐ来ると思うからそのままちょっと待っといてや」
コンコン……。
「失礼します」
「早速来たか。じゃあ自己紹介しとこか。私は……」
一通り自己紹介が終わった後、智子が今後の予定を述べた。
「このあとやけど、若干名合流する予定や。そのあと模擬戦を含む訓練になってる。予定宙域は……」
連絡が終わった後、好奇心旺盛のレミィがこみパの面々に色々質問している。
智子はそれを横目にこれからの作戦のことを考えていた。
(これからが山場やな。デビルガンダムの件もあるし、なにより人間同士の争いだけじゃなくなるやろうし……)
「そろそろ補足できるはずだが……」
言葉が全て終わらぬうちにオペレータが告げた。
「レーダーに反応。1〜2時方向に敵艦補足。データにあるザンジバル級です。距離6.4光秒、レッドゾーン突入まで28分です」
「まだ敵に補足されてないな?」
「……はい。敵の動きからしてその可能性はないと思われます」
その報告を聞きアルベルトが席から立ち上がった。
「よし! 全速で突入! イエローゾーン突入と同時に30秒の艦砲射撃。その後に各部隊発進。同時に回避運動用意!」
命令を出し終わると同時に通信が入った。
「おい。今回の作戦の目的はなんだか説明しろ! 抽象的過ぎてよくわかんなかったぞ」
「仕方ねぇんだ。俺もそんな風にしか言われてないんだ。ただ『敵戦力の出きる限りの減少』だから特に無理する必要もないと隊長もおっしゃってた。だから無理しないでやれるだけやって来い」
「ちっ。いまいち納得いかないけどまあいいさ。じゃあ自由にやっていいんだね?」
「ああ。各部隊の指揮は任せる」
「了解」
ヴィーーン……ヴィーーン……
「司令官代理。9時方向より未確認艦艇接近。レッドゾーン突入まで後20分ほどです。至急艦橋に上がってください」
智子は思考を中断すると一つ舌打をした。
「どこの馬鹿たれや。こないな時に仕掛けてくる奴は! 総員第1級戦闘用意、各パイロットは各々の機体で発進準備。ミノフスキー粒子撒布。うちもすぐ艦橋に上がる。戦闘ブリッジに移行しとき」
「やれやれ。来ていきなり戦闘かいな。まあええけどな。ここなら暇せんですみそうやわ」
由宇がそう述べると全員ミーティングルームを飛び出しハンガーへ走った。
「廊下は走ったらあかん言うとるやろ」
「こみパ会場で走ったらあかんいうとるやろ! こんの……どあほがあぁぁぁぁぁぁ!」
そう叫んで由宇はふと疑問が湧いた。
(人数が足りんやないけ。委員長……じゃないわ。司令官代理は隣にいるとして他に誰か……)
そして視界の下方に何か今までなかったものがちらと見えた。
「あいたたたたた。また転んじゃった。あ、大丈夫ですか? どこか怪我してないですか?」
「あ、大丈夫ですぅ。千紗は、転びなれてるから平気ですぅ」
とんでもなく緊迫している雰囲気の中……
「あんた、裏科理緒とか言うたな。それに千紗も。あんたらなにやっとんのや」
「わ、私、雛山っていう苗字なんですけど」
「そんなことはどうでもええんや。あんたら、ここでなにやっとんのや」
「え、あの。転んじゃったんですけど……」
「見ての通りぃ、理緒さんとぶつかって転んでたですぅ」
「……ここ、宇宙なんやで。わかっとるか? あんたら」
「あ、はい。ここ数ヶ月宇宙にいましたから」
「はい! シャトルでここまで来たので、ここは宇宙ですぅ」
…………ブチッ!
「いい加減にさらせや! ここは宇宙なんやで! νガ○ダムっぽく書こうと無い知恵と文才引っ張り出して書いとるおたくな作者が、宇宙空間で転ぶか? 転ぶと思うんか! ええ言うてみ!」
「え、一体何のはな……」
バシィ! 理緒が全て話し終わる前にハリセンが炸裂した。
「じゃかぁしいわぁ! ここは宇宙で無重力なんや! なのにあんたらはそれを無視しとる! わかっとるか? 床に転んでバウンドもせずにそのまま重力があるようなその動き! νガン○ムの戦艦の中じゃありえんことやろ!」
「でもぉ、銀河英○伝説ではぁ……」
バシィ! 千紗が(以下同文)
「あほんだらぁ! 銀○伝なら艦隊戦メインやろ! うちらは何か?! スパ○タニアンやらワ○キューレに乗るんか?!」
尚も由宇と理緒と千紗の漫才(?)は続いていたが智子はそれを無視して艦橋にあがった。彼女は多忙でそんなことに付き合ってられる程暇を持ち合わせていなかったのである。
「司令官代行! 指示を願います」
艦橋に着いた途端にオペレーターの叫び声が聞こえる。
「戦闘中は神岸さんが艦長や。よろしく頼むで。うちは外に出るからな」
「は、はい」
「わからんことだらけやと思うから、わからん思ったら副官に聞くんやで。おろおろ
してたら撃沈(おと)されるからな」
言うが早いか智子はブリッジを飛び出していった。
その背を見送りながら、あかりは必死に浩之が艦長の時の対応を思い浮かべた。
「レッドゾーンまで後どれくらいですか?」
「距離にして1.4光秒。時間にして18分。至近です!」
「え……と。直ちに迎撃戦用意!」
そこで一区切りつき、副官に話し掛けた。
「あとの事を一任していいですか?」
副官はやさしく微笑んだ。それはまるで、実の娘を安心させるかのような微笑だった。
「了解しました。敵イエローゾーン突破と共に弾幕用意。並びに退避運動用意」
艦を一任されたベテランの副長が的確な判断を飛ばすのを聞き、あかりは思い出した。浩之もこのベテラン副官に様々な事を教わりながらやってきたことを……。
そのころハンガーでは……。
「これが新しい機体……」
マルチは新しく配備された自分のMS、トールギスを呆然と見上げていた。
「なんだか曼荼羅ガンダムと全然違いますぅ」
「Oh! これがマルチの新しい機体ネ」
「あ。レミィさん。そう……みたいです」
「うーん。これじゃ前と戦い方を変える必要があるネ」
「え?! どっ、どうしてですか?」
「だって、マンダラは、接近戦が強化されてるMSだったけど、これはそうは見えないヨ、マルチ」
「あ……。そ、そうですね。ライフルがあるから遠距離戦向けでしょうか?」
「多分そうネ。だから〜、今までと同じように行動すると……」
「こ、行動すると?」
「……敵に、bang!」
「ひゃっ!」
「ってことになるネ。気をつけなきゃだめヨ」
「は、はいぃ。気を付けますぅ」
「それじゃあ、アタシは自分のMSに行くヨ」
「はい。私もこの子に乗ってみます」
後少しでザンジバルに到着する予定であったシャトルの中で、セリオは閉じていた目を急に開いた。それに気づいた彩が珍しげに見た。彼女はシャトルにいる間、このように突然目を見開くことなんて無かったからである。
「……………………あの……………………どうか……しましたか?」
「前方宙域のミノフスキー濃度が戦闘レベルになっています」
「……………………ゼンジバルは……あの中でしょうか」
「その確率はかなり高いと思われます。敵、及び敵戦力が不明のため、このシャトルが狙われる危険性があります。我々も出撃した方が良いと思われますが」
「……………………出撃…………しましょう。…………このシャトルのみなさんに…………迷惑かかると……いけないから」
「わかりました」
智子がハンガーで自分のMSに乗りこんだとほぼ同時に艦に衝撃が走った。
「艦橋。今の状況は?」
「敵がイエローゾーン突破と同時に撃ってきました。まだこちらに損害はありません。あとセリオ、彩両名が至近にいるので出撃するとの事です。敵艦はラー系統の艦の模様。しかし完全にデータとは合いません。どこか改造していると思われます。もっとも類似しているのがラー・チャターです」
「わかった。敵の砲撃が止んだらこちらも発進するで!」
「司令官代理! 既に敵艦正面との間に機雷を撒いていますのでご注意下さい」
「了解! 全機、北弦より回り込むで。味方にやられるな!」
「ちょっと待った!」
「なんや? 大庭さんか、どないしたんや」
「なんだじゃないわよ! 敵の機体がかなり多いのにそんな作戦で良いわけないじゃない!」
「なんでそんなことがわかるんや」
「あたしのニュータイプのおかげよ」
「そんなん当てになるんか?」
「ちょっとちょっと、疑うの? このあたしの能力を。これだからパンピーはイヤなのよ」
「あのな智子はん。詠美はおつむは弱くてもNTに関しては別や。詠美がそう言うてるなら敵さんの数はかなり多いと見てええで。ここは先手を取られてる、守りに徹した方がいいんとちゃうか?」
「…………」
智子の考えを打ち消すようにオペレーターが悲鳴を上げる。
「あと4分でレッドゾーンに突入します!」