GC0083年、4月29日。
地球衛星軌道上に待機する戦艦「リーンホース」のブリッジで。
「か、閣下。ち、地上の諜報員の方から、連絡がありました」
ジン・ジャハナムは、部下である少女からの報告を聞いていた。
「ガンダム01は、センチ=ベルの永倉えみると共に行動を開始した模様。02はF&Cのフリーデンと共にあり、03は箱根、04は中近東でそれぞれ単独行動中。05は、長崎にて補給を受けてます」
「みんな、上手くやってくれてるみたいね」
艦長シートに腰掛けたまま、ジン・ジャハナムは小さく微笑う。
「東鳩先生との連絡は、ちゃんととれてる?」
「ええ、今のところは……」
少女の顔が曇る。だが、ジン・ジャハナムの表情はあくまで穏やかだ。
「フフ……いつ牙を剥いてくるか知らないけど、今は思いっきり利用させてもらいましょう。お互いに」
ジン・ジャハナムは、今度は宇宙の報告を少女に促す。
「里村茜さんですが、センチ=ベル宇宙部隊と合流したようです。サイコフレームも、νガンダムとともに杉原真奈美さんの手に渡りました」
「それでいいわ。インチャネに力をつけさせるのは面白くないけど、センチ=ベルは信じられる人たちよ」
会ったこともない少女たちのことを、ジン・ジャハナムは古くからの友人のように語る。
「ジュピトリスは?」
「火星圏にまで到達しました。例の船と接触を持ったようです」
「そう……気になるわね」
ジン・ジャハナムの口調が厳しい。
「月島の人間は、要注意よ。警戒を怠らないで」
「は、はい。……それと、ヴィクトリー二機は、指示通り『ひびきの』と『こみパ』に譲渡しましたが……」
言いにくそうに、少女はジン・ジャハナムの表情を窺う。口調が、事務的なものから友達のそれに変わる。
「ほ、本当にいいの?。こみパはともかく、陽ノ下光さんは、もしかしたら……」
「ええ」
穏やかな微笑みのまま、ジン・ジャハナムは首を振る。
「あの子には、私を超えてもらわなきゃ……ね」
「……そんな……」
少女が、哀しげに何かを言い掛けるが、
「閣下。これ以上この宙域にとどまるのは危険です」
別の部下の進言に阻まれてしまう。
「ホワイトドールの積み込みは?」
「あと3分ほどで」
「2分でお願い」
「右舷二時方向に反応っ!!戦艦クラス!」
レーダー手が、緊迫した声をあげる。
「艦影確認…アイリッシュ級!。PS軍です!」
「ラーディッシュ……『Noel』ね」
わずかに顔をしかめて、ジン・ジャハナムは呟く。「ときめき」「TLS」と並ぶ、PS軍の精鋭だ。
「ど、どうするの?」
「ウチの護衛艦隊では、Noelのゴーショーグンの相手は辛いかな」
ジン・ジャハナム、艦長シートから立ち上がる。
「私が時間を稼ぐわ。V2、アサルト装備で出るわよ」
「そんな、大将みずから」
「いいのよ」
ジン・ジャハナムが笑う。
先刻の微笑みと違い、自信に満ち溢れた傲慢な笑い。
「私は、パイロットをやってる方があってるの」
「敵艦、発砲!」
「ビームシールド展開!!。全力射撃三秒の後、HM隊を前面に押し出して。ホワイトドールのHLVは、絶対死守!」
指示を飛ばしながら、ジン・ジャハナムはブリッジを出ていった。
長い髪が、無重量に舞う。
「……閣下……」
親友の背中を見送りながら、少女は呟いた。
今はもう、あのころのようにお互いの名を呼ぶこともなくなってしまった。
自分はそのことを淋しく思うが、彼女の方はどうなのだろう。
『虹野さん、清川さん……見晴ちゃん……みんな……』
古い友人たちの名前を心の中で呼びながら、少女は祈る。
『お願いだから……早く気づいてあげて』
『じゃないと……あの人は……』
少女の、そんな祈りを置き去りにして。
星々の海に、光の翼が羽ばたいた。
スーパーロボット大戦GG