サイド7総合5



「若菜さんが」
「ダイアンサスが」
「墜ちた!?」
「そ、そんな」
 その事実は、優勢に戦っていたアヤサキ=フリートの面々を驚愕させた。
「アヤサキ=フリートに告げます!!」
 何時の間にか接近して来ていたアーガマから、如月未緒の声が全方向回線で届く。
「あなた方のリーダーは撃墜されました!。すでに母艦への退路も断たれています!」
 Vガンダムとダンバインによって、アヤサキ=フリートは母艦「シェフィールド」と分断されている。
 光は、そこまで計算して敵陣に割り込んだのだった。
「もはやあなたたちに抵抗は不可能です!速やかに武装解除し、投降してください!」
 それは嘘だった。若菜を失ってもなお、楓や舞たちはまだ戦える力を残している。
 だが、大将を墜とされたショックは、彼女たちにその嘘を信じ込ませていた。
「ど、どうしましょう……?」
 おろおろと、鞠絵は衛に訊ねる。
「そ、そんなこと言われたって……ねえ、楓さん?」
「…………」
「あははー、困りましたねー。こうなってしまっては……」
「心配いらない」
 そう言ったのは、舞だった。
 いつもと変わらぬ、むしろ呑気とも取れる口調。
「舞さん、そのココロは?」
「私たちは、もう目的を達している」
 ズワァースの黒い腕が、R−3に向かって無造作に差し出された。

「行こう」

「な、なにいってんの?」
「どうして、八重さんがあなた達についていかなきゃならないのよ?ねえ、八重さん?」
 花桜梨は、答えなかった。
 その代わりに、彼女がしたことは……
「T−LINK、フルコンタクト」
 R−3のシステムが、復活した。
「ストライクシールド、発射」
 背中にマウントされたストライクシールドが、アーガマめがけて飛んでいく。
 ブリッジを攻撃する構えをみせたところで、ピタリと静止する。
「動かないで」
 その声が、別人のように冷たい。
「動けば、アーガマを撃沈します」
 その花桜梨の行動に、全員が凍りついて動けない。
「ちょっと……どういうことよ!?」
 我に返った琴子、花桜梨に向かって怒鳴る。
「私、もうあなた達とはいられない」
 そう告げると、花桜梨は舞の手引きに従って、「撤退」を開始した。
「若菜さん、大丈夫ですか?」
「……ええ……」
 半壊したGP−02を抱きかかえて、鞠絵のガッデスも離脱する。
「な、なんかよくわかんない展開だなァ。撤退だってさ、四葉」
「りょーかいデス…」
 事情が飲み込めないまま、衛の破烈の人形も踵を返した。
 それで収まらないのが、ほむらだった。
「花桜梨……てめえ!!!」
 憎々しげにその名を呼び捨てる。
「てめえ、アヤサキ=フリートのスパイだったんだな!!あたし達を騙して、それでっ!!!」
 後先考えず、ゴッドリラーはR−3に特攻する。
「まだやるのか、この!!」
 衛は振り向くと、エネルギーソードを抜き放った。
「そういうことなら、まっぷたつにしてあげるよ!。スポ根ソードっっっ!!!」
 その刃がほむらに届く前に。
「ストライクシールド、行って」
 R−3の攻撃が、ゴッドリラーを打ちのめした。

>>>>
●ゴッドリラー
ダメージ1791

HP 443/7800

※破烈の人形の攻撃は不発
>>>>

「花桜梨!!。あたしは、絶対お前を許さないぞ!!!おぼえとけぇぇぇぇ!!!!!」
 激怒するほむらを無視して、花桜梨はR−3を転進させた。
 他のアヤサキ=フリートの機体も、次々と離脱を開始する。
「ち、ちょっと待って!八重さん!!」
 R−3の背中に声を掛けたのは、光だった。
「どういうことなの?説明してよ!わかんないよ、こんなんじゃ!!」
「……わからなくて、いい」
 花桜梨の声は、あくまで無機質だ。
 だが、わずかに語尾が震えるのを、光は見逃さなかった。
「ねえ?嘘でしょう?何か事情があるんだよね?。お願い、話してよ!」
「……嫌」
 小さいが、はっきりとした拒絶のこもった声だった。
 光は、それでもあきらめなかった。
「ねっ?八重さん!。こんな人たちの言うこと聞いちゃだめだよ!私たちを信じて!」
「ごめんなさい」
「八重さん!」
「私……あなた達を信じたくない」
 それは、決定的な言葉だった。
 「信じられない」といわれるなら、まだ救いはあった。
 だが、「信じたくない」といわれたら……。
「あなたは……怖くないの」
 言葉を失った光に対して、花桜梨は言った。
「人を信じることが」
 知らず、光は胸のペンダントを握り締めていた。
 それは、遠い昔に去っていった大切な人との想い出。
 だが……

(もしも、辿り着いたゴールに待っていたのが、恐ろしいものだったとしたら?)

(あの日の少年が、変わり果てた姿で待っていたとしたら?)

 その疑問に、光は、答えを出せていない。
 ましてや、今の花桜梨を引き止める言葉など、見つかるはずもなかった。

 時に、GC0083年、4月。

 その別れが、後に地球圏を揺るがす大事件の幕開けになると知るものは、誰もいない。



「信じて欲しい 君の涙を見たくないから」
「Try Your Luck!」
「蒼ざめた瞳 見つめる炎」
<完>


ときめきの目次に戻る

ひびきのの目次に戻る

アヤサキ=フリートの目次に戻る