「The End Of Strike」VS「イノセントイクリプス」
前編
The End Of Strikeの控え室。
るりかが、「よーし!」だの、「どりゃぁ!」だの呟きながら、壁をがしがしと殴っている。
「ああ、うるさいのだっ!!」
ノートパソコンから顔をあげて、メイは怒鳴った。
「貴様、もうすこし落ち着いていられんのか?」
「うん!無理ッ!!」
腕をぶんぶん振り回しながら、るりかは断言した。
「だってさぁ、あの晶と戦えるんだよ?しかもエヴァのおまけつきっ♪。私の『すーぱーろぼっとだましい』が燃えあがるんだよぅっ!」
メイは、心底呆れたように「やれやれ」と首を振った。
その横では、今回のファイトの後見人であるライズ・ハイマーが、いつもの無表情で佇んでいる。
「ライズ・ハイマー。このおきらくごくらくな庶民に、今回のタッグトーナメントがどういうものなのか、教えてやるのだ」
「……しょうがないわね……」
そう呟くや否や、ライズの右手が閃いた。
彼女愛用のダガーが、何もない空間を射抜いていた。
……いや、そのダガーは、虫のようなカタチをした超小型ロボットを貫き、射落としていた。
「な、なに?これ!?」
「マイクロバグス。エルクゥの超小型偵察機よ」
キィキィと不気味な音をたてるバグスを踏み潰しながら、ライズ。
「エルクゥって……あの、こないだデザイアに攻めてきた宇宙人?」
「エルクゥだけではない!」
と、メイ。
「ソニー、セガ、DOSVの各勢力はもちろん、、来栖川、雫、そしてコズミックガード……すべての陣営の諜報部が、このトーナメントを舌なめずりしながら見ているのだ」
「そ、そうなの?そういえば、なんか見られてるなー、って気はしてたけど……」
「先刻のALICE発動やV2マックスパワーの時は、滑稽なほど色めきたっていたわね」
そのライズ自身も、レッド本国に送るデータ収集に忙しかった。……もちろん、彼女は他人に気取られるような真似はしなかったが。
「だが、奴等の一番の目的は、メイたちの試合なのだ。今の虫どもが、うるさいくらい飛び回っておる」
「ふーん……で、それがどうかしたの?」
「ど、『どうかしたの?』だと!?」
首をかしげるるりかを、メイは怒鳴りつけた。
「まだわかっておらんのか?つまりだな……」
「何言われたってわかんないよ!!私は、全力を出したいの!メイだってそう言ってたじゃない!あれは嘘だったの?」
逆に問いつめられ、メイは言葉に詰まる。
「う、ウソなんかではない!」
「うん、それならよかった!私、嘘は大嫌いなんだっ」
カラッと笑うるりか。
「だ、だから、メイが言いたいのはだな……」
「さーて!!試合まで、ダイモスのとこで体動かしてこよーっと♪」
るりかは取り合わず、スタスタと部屋を出ていった。
頬をふくらませてそれを見送るメイに、ライズが声をかける。
「あなたまでこの大会のお祭り気分に踊らされて、みすみす敵にデータを暴露するような真似は、しないわよね?」
「あ、当たり前なのだ!。スーパーロボット魂だかなんだか知らないが、テレビアニメのようなわけにはいかないのだっ!」
「そう」
薄く笑い、ライズはメイの顔を見た。
見透かしたような目だ。
「くっ……もういいのだっ!」
不貞腐れたまま、メイも控え室を出ていった。
イノセントエクリプスの控え室。
晶と由梨香は、優雅にお茶を楽しんでいた。
「……由梨香さん」
「はい?」
「季節外れの蚊がいるわ、ここ」
「そうみたいですね」
目を閉じて紅茶の香気を嗅ぎながら、由梨香は答える。
「晶さん。あなたは、自分の演奏会にライバルが見にきていたら、どうします?手の内を隠しますか?」
「冗談じゃないわね」
口に広がるコーヒーの苦みを楽しみながら、晶。
「逆に最高の演奏をみせつけて、私との違いをわからせてやるわ」
「フフ……やっぱり私たち、気が合いますね」
由梨香、声を立てずに微笑する。
ティーカップが、かちゃりと音をたててテーブルに置かれた。
「じゃあ、そろそろいきましょうか」
「ええ」
Cブロック一回戦第二試合
「The End Of Strike」VS「イノセントイクリプス」