「SSS」VS「朧」前編



 それは、聞き慣れた自分の姉の声だった。
「ちょっと栞!なんでこの大会に出てるのよ?」
「わ、お姉ちゃん。びっくりしたよー」
 美坂栞は、きょとんと目を丸く見開いて、姉の香里を迎えた。
「あなたの事だから大人しく観戦してるだけだと思ってたのに…」
 戸惑った表情の香里。それもそのはず。ブロックこそ違えど、彼女も出場者のひとりなのである。
「えっとね、この前に家で一緒に「ガンダム以外ファイト」をTVで観てたでしょ?」
「ええ。栞は特に、夢中になって観てたわね」
「みんなとっても素敵なファイトをしてたから、私もそれに刺激されたのかな。『お祭りは、どうせなら見るより参加する方が…』って」
「そ、それはそうかも知れないけどねえ……」
 不機嫌そうな顔のまま、香里。決して身体の丈夫なほうではない妹が戦場に出ることには、抵抗があった。
「でも……本当は」
「なに?」
「もっとお友達を作りたかったから、かな?」
 エヘヘッ、と栞は笑った。照れたようにはにかむその表情を見ると、香里は何も言えなくなった。
「まぁ、いいわ。でも、やるからには決勝まで上がってきなさい」
「ふぇ……」
 今度は、栞が言葉に詰まる番だった。
「私たちの一回戦の相手、あのLEAFの最強コンビなんだよ?。その次は、キング・オブ・ハートさんのチームか、ファーストガンダム直系の後継機のいるチームぅ〜…」
 妹の言い訳を遮って、姉は言った。
「あなたを倒すのはあたしよ。それまでに負ける事は許さないわ」
 少しすねたような表情をしていた栞だったが、
「うん、わかった。お姉ちゃんとの試合、楽しみにしてます」
「あ、でもその前にあたしが決勝まで残れないかもね」
「ぶーっ。そんなこと言う人、嫌いです」
「ふふ……冗談よ」
 美坂姉妹はそう笑いあうと、決勝トーナメントでの再会を誓った。

 そんな二人の様子を傍らで見ていた衛、もの欲しそうにひとり呟いた。
「いいなぁ〜、お姉さんとかから応援あって、いいな〜……」
 衛にも、姉妹がいないわけではない。それどころか、11人もの同い年の姉妹がいた。
 だが、姉妹であり傭兵集団でもある「シスタープリンセス」は、こと戦闘に関してはとことんシビアだった。しかも、姉妹たちはたったひとりの「兄」を奪い合う恋敵でもある。
「それにしたって、応援電文の一通くらい…咲耶〜、春歌〜、鞠絵〜(以下略)、僕は悲しいよぉ」
 嘆く衛のところに、その姉妹のひとりである四葉が駆けてくる。
 彼女は、今回の対戦相手「朧」の偵察に行ってきたのだった。
「マスタ〜!。しっかりチェキしてきたデ〜ス!!」
「ナイス四葉!。御褒美に、可愛いあだ名を付けてあげよう!!」
「い、いらないデス!」
「んーっとねぇ……」
「考えなくていいデス〜!!!」
「決めた。『よっチャン』」
「そのまんま〜〜!!??」
 ガビーン、と懐かしい擬音とともにのけぞる四葉。
 いろいろな姉妹の参加する、GG最強タッグトーナメントであった。


「楓ちゃん、機体の調子はどう?」
 ミラージュエルメスの月島瑠璃子、ゆっくりとダンクーガの周囲を旋回しながら訊ねた。
「……良好です」
「それにしても、ダンクーガって大きいんだね」
 近くで見ると、その巨大さが実感できた。MSよりもひとまわりは大きいエルメスですら小さくみえる。
「えへへ……」
 悪戯っぽく笑うと、瑠璃子は絶妙のコントロールで機体を操り、エルメスをダンクーガの頭上でぴたりと静止させた。
「こうすると、ダンクーガが羽根つき帽子かぶっているみたいだよね」
「あはは、ホントだー」
「瑠璃子、上手いこというなあ」
「…くす…」
 初音と梓が笑う。楓も、かすかに笑った。
 無言のままなのが、千鶴だった。彼女は、なにやら自分の思考に没頭していた。

(『彼女』と一回戦で当たるなんて……いや、むしろ好都合だわ。マルチナ博士の思惑、この目で…)

「……千鶴姉さん」
「な、なあに、楓」
 突然声をかけられ、応える千鶴の声はひっくり返った。
「……この試合、『力』を使おうと思います」
 千鶴、絶句する。
「本気なの?」
「そうでないと……勝てません」
 楓は、「彼女」のことは知らないはずだ。なのに、楓なりに何かを感じ取ったのだろうか。
「楓ちゃんの言う通りだよ。千鶴さん」
 独特の輝きを放つ瞳のまま、瑠璃子も言った。
「栞ちゃんと衛ちゃん&四葉ちゃんの電波は、強いから」
「フォワードの二人が、そう言うなら。なぁ、初音」
「う、うん。二回戦がちょっと辛いけどね」
 その時、ちょうど「The Shooting Star(s)」が姿を見せた。
 御伽噺の中の白い巨人「バングドール」。そして、ZZと双璧を成すDOSV連邦最強のガンダム「Ex−Sガンダム」だ。
「わかったわ……」
 千鶴は、静かに言った。
「この試合、絶対に勝ちましょう」



Aブロック一回戦第一試合
「The Shooting Star(s)」 VS 「朧」



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